日本各地に寿司店はあるが、「銀座の寿司」となれば、大看板の一つである。
銀座の寿司がこれほどまでにもてはやされるようになったのには、色々と理由があるがその一つが鮮魚卸との関係だとも言われている。
つまり、築地に入ってくる非常に素晴らしい魚、なかでもマグロを扱う卸が「銀座の一定以上の格の店で無ければ取引しない」などと言って取引先を吟味し築地に入る最上級の品を食べるためには、銀座のしかもトップクラスの店に行かないと味わえないという時代が存在していたのだ。
しかし、そのような取引先を選べる時代は、バブル崩壊とともに終了となる。
「社用族」という、コスト意識を全社員が持つことが当然となった今のご時勢では死語となったこの言葉が、普通に使われていたバブル期に、まさに社用族で反映していた銀座だったがバブル崩壊とともに、社用族が激減しお店にとって厳しい時代が到来することとなる。
それは同時に、卸の業者にとっても取引先を選んでいられない状態に突入したことを意味した。
その結果、最上級のネタが様々な場所に供給されるようになり都内各地にも新たな寿司の名店が誕生することとなったのだった。
近年では都内の一定の格の寿司店ならば、ネタの差は生まれにくくシャリとのバランスや、ネタの管理、さらに握り前に出す軽いつまみなどが、店の評価の多くを占めることとなった。
それでもなお、銀座に店を構えるというのは、多くの寿司職人の憧れであり、食べ手側にとっても大きな意味を持つ。
銀座の寿司店にも様々な格はあるが、ガラスのショーケースなどの無い、いわゆる高級点ならば値札などは無くお任せで頼んで
安くても2万5000円くらいを覚悟しておく必要がある。
しかし、それだけを払っても「寿司とはこんな食べ物だったのだ」と、再認識させてもらえるだけの味を体験することが出来る。
廻っている寿司だけ食べて寿司と思うのもよいが、本物を知っているのと知らないままで過ごすでは雲泥の差がある。
とはいえ、いきなり銀座の寿司店に行くには度胸がいるのも事実。
ならば、若いお客さんの多い麻布の寿司店に行って、本物の寿司を体験するのも一つの足がかりだと思う。
いやいや銀座の店で…というならば、何も超有名店にいって緊張して食べる必要は無いと思う。
個人的にオススメなのは、かつて麻布で店を営んでいて、満を持して銀座に乗り込んできた「野じま」というお店。
銀座7丁目の地下1階にある6席ほどの小奇麗かつ小所帯な店だが、とにかく料理の質は高い。
また、マグロには並々ならぬこだわりを持っているので、マグロ好きな人には満足度が高いだろう。
とにかく、怖がらずに一度足を踏み入れて、新しい食の世界を広げてみてもらいたい。
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